まだまだ続く掛算の順序問題ですが、掛算の順序問題は調べてみると50年の歴史があり、「え?まだやっているの?」という印象かと思うが内容(パラドックス)も進化していて、以下のように詭弁を上手く隠した秀逸なものがあります。
掛算順序派の主張:速さ5m/sの2kgの物体がもつ運動量の値と、速さ2m/sの5kgの物体がもつ運動量の値は等しい(交換法則)
つまり、
5m/s x 2kg = 2m/s x 5kg
この式の左式(5m/s × 2kg)の条件での運動エネルギー(25 J)と、右式(2m/s × 5kg)の条件での運動エネルギー(10 J)は異なる
したがって、掛算の順序 (5x2) と (2x5) は異なる意味があるので掛順は大事ということらしい。
「さすが50年の歴史」を感じる詭弁ですが、一つづつ見てきます。
(1)交換法則で、単位を入れ替えてよいのか?
5m/s x 2kg = 2m/s x 5kg
この式ですが、左辺では「5m/s」と「2kg」だったものが、右辺では「2m/s」と「5kg」になっており、数値と単位の組み合わせが入れ替わっています。
ここで重要なことは「交換法則は単位を入れ替えてもよいのか?」という話です。
(数学で扱う交換法則は数についての法則であり、通常は単位を含めて議論していません)
こういうと「式の値(10kg⋅m/s )」が同じだから交換法則は成立している。
という反論が来るのですが、下記の式ではどうでしょうか?
50cm + 10m ≠ 10cm + 50m
左辺:50 cm + 10m = 50 x 0.01m + 10m = 0.5m + 10m = 10.5m
右辺:10 cm + 50m = 10 x 0.01m + 50m = 0.1m + 50m = 50.1m
となり左右の値が異なることが分かります。
これは、数学でいう交換法則を、単位を含む物理量の入れ替えにそのまま適用できないことを示します。
(2)なぜ掛算では値が合うのか?
では、掛算にしてみましょう。
50cm x 10m = 10cm x 50m (5平方メートル)
になりまして、左右の式がイコールになります。このからくりは何でしょうか?
掛算の場合は、
(50 x 10) (cmxm) = (10x50)(cmxm)
という計算を行うことになるので値が一致するわけです。
つまり、掛算の場合は、数値部分と単位部分を分けて計算できるため、左右の値が合うわけです。
一方で、足算のように数値と単位を独立して計算できない場合は左右の値が合いません。
(3)結局のところどういうことか?
要は単位有の掛算の交換法則モドキ(掛順が変わるが値が同じ)ということが言えますが、これをもう少し数学的(?)に説明しますと、
5m/s x 2kg =2m/s x 5kg
この式は構造的に下記の式と同じです。
a x b x c x d = c x b x a x d (左右は、bとdの位置は同じでaとcを入れ替えている)
ここで、
(a x b) x (c x d) = (c x b) x (a x d) (左から2個ずつカッコでくくる)
上記式に対して
A = a x b
B = c x d
C = c x b
D = a x d
とすると上記の式は
A x B = C x D
というということを示す式になります。
左のA x Bと右の C x D は値は同じですが、別の構造つまり、C x D は A x Bを交換した式ではありません。
一方で、交換法則とは、
A x B = B x A
になります。つまり
5m/s x 2kg = 2m/s x 5kg
は
a = 5
b = m/s
c = 2
d = kg
で
A = 5m/s
B = 2kg
C = 2m/s
D = 5kg
となり
A x B = C x D ということで、
これは交換法則ではありません。値が一致するのは、数値部分が交換法則を満たすからです。
ということが言えます。
交換法則の正しい適用方法は左辺については、A x B = B x A、で
5m/s x 2kg = 2kg x 5m/s
右辺では、D x C = C x Dで
5kg x 2m/s = 2m/s x 5kg
となります。
まとめ
5m/s x 2kg = 2kg x 5m/s
この式は(交換法則により)値は同じだが意味が違う式ということで掛順の大事さを主張するが、数学的にも左右の式の意味が異なることを示しており、交換法則を適用したわけではない。つまり「大事なのは数値は単位を一緒に交換!」という当たり前の話になります。
※この詭弁の被害者の方でこの記事を読んで救われた方は是非拡散してください。